こちらの本を読みました。目次を見るとわかりますが、長いです。
子どもは40000回質問する あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力
- 作者: イアン・レズリー,須川綾子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/04/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書の目次
- はじめに 「知りたい」という欲求が人生と社会を変える
- 言葉を操る天才子ザルが「質問しない」こと
- 売れっ子プロデューサーの苦悩
- 人の好奇心をかきたてる番組をつくる
- 現代は人類発展の停滞期――もはや賢いだけでは生き残れない
- 知りたいと思う気持ち――認知欲求
- 好奇心を育てるには「労力」が必要だ
- 「拡散的好奇心」――知りたいという心のうずき
- 「知的好奇心」――知識と理解を求める意欲
- 「共感的好奇心」――他人の考えや感情を知りたい
- 危険な「好奇心格差」が生まれつつある
- 好奇心は加齢による認知機能低下に抵抗する
- 第1部 好奇心のはたらき
- 第1章 ヒトは好奇心のおかげで人間になった
- 子どもは銃を触らずにはいられない――ブライアンの例
- 拡散的好奇心の功罪
- 言語習得への飽くなき欲求――アーゲイエスの例
- 拡散的好奇心が知的好奇心に変わるとき
- 人間が拡散的好奇心を持っているわけ
- 知識欲は脳内で喜びの物質へと変わる
- 人は文化を蓄積し、それを探究することで環境に順応する
- ダ・ヴィンチのToDoリスト
- 第2章 子どもの好奇心はいかに育まれるか
- 知的好奇心の起源――ロンドンのベビーラボ
- ヒトの長い子ども時代の秘密
- 乳幼児の学習は大人や環境との合弁事業
- 好奇心旺盛な子とそうでない子の違い
- 指さしと喃語は学習の心構えができている合図
- 子どもは四万回質問する
- 質問の技術とパワー
- 第3章 パズルとミステリー
- 第1章 ヒトは好奇心のおかげで人間になった
- 第2部 好奇心格差の危険
- 第4章 好奇心の三つの時代
- 第5章 好奇心格差が社会格差を生む
- 大学教育を受けない代償は大きい
- 学業の成績には知的好奇心も大きく影響する
- 好奇心格差が経済格差を悪化させる
- 好奇心を維持できる人が成果を手にする時代
- 第6章 問いかける力
- 貧しい家庭の心の問題
- 高所得層の家庭の子は、低所得層の子より多く質問する
- 多くの質問をする子は、親から多くの質問をされている
- 経済的余裕のある家庭とそうでない家庭では何が違うのか
- 大人はなぜ質問をやめてしまうのか
- 大企業病――意図的な無知
- 質問すべきときに質問しない理由
- 第7章 知識なくして創造性も思考力もない
- 第3部 好奇心を持ち続けるには
- 第8章 好奇心を持ち続ける七つの方法
- 成功にあぐらをかかない
- ウォルト・ディズニーとスティーブ・ジョブズ
- 中国の帝国はなぜ没落したか
- 自分の領域の外に目を向ける
- 自分のなかに知識のデータベースを構築する
- 広告業界のバイブルに学ぶ
- アイディアを得るための5つのステップ
- ひらめきは偶然ではない
- キツネハリネズミのように探し回る
- スペシャリストかジェネラリストか
- 多才なキツネと堅実なハリネズミの雑種
- 大学教育の問題
- なぜかと深く問う
- アイルランド和平の立役者
- 交渉の達人――「なぜ」を問う
- 共感的好奇心が物を言う
- 人はなぜ「なぜ」を避けるのか
- 手を動かして考える
- 油は波を静めるか――フランクリンの実験
- ミクロとマクロ、具体性と抽象性を統合する
- 知識と技術、思索と行動は依存しあっている
- ティースプーンに問いかける
- 退屈会議
- 何も起きないときに何が起きるか
- 「つまらない」を「面白い」に変える技術
- 夫婦生活の退屈は痴話喧嘩よりも有害
- パズルをミステリーに変える
- 暗号のエキスパート
- パズルの裏にミステリーを探す
- おわりに
- さあ、知識の世界を探究しよう
- アメリカの土地を踏まなかった男の判断
- 自己中心の考えから逃れる
- 絶望の淵から――好奇心の喪失
- 好奇心とは生きる力
- 第8章 好奇心を持ち続ける七つの方法
- 謝 辞
- 補 足
- 訳者あとがき
- 参考文献
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全体的な感想
読んだきっかけはhonzのこの記事です。
最近は読み損ねた昔の本を読むことが多かったのですが、この本は2016年の本なので時代考慮をせずにそのまま読むことができました。翻訳も読みやすいです。タイトルは副題の方が原題に近いですね。
子供は40000回質問する - あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力
CURIOUS - The Desire to Know and Why Your Future Depends on It
「子供は40000回質問する」は、第2章の小見出しのひとつです。
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育児書としてだけでなく、自分のためにもなる本でした。図書館から借りて読みましたが、様々な実験結果や知識人の意見を幅広く引用しているので、今後の参照のためにも手元に持っておきたいです。
原書のKindle版ならば624円とお安いですね。
Curious: The Desire to Know and Why Your Future Depends on It (English Edition)
- 作者: Ian Leslie
- 出版社/メーカー: Quercus
- 発売日: 2014/04/30
- メディア: Kindle版
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今後の生活に活かしたいことメモ
マシュマロテスト(目の前のおやつを我慢する実験)についての言及があったが(p32)、やはり子供はこういった欲望を抑えられないようだ。今後も、眠気や空腹のせいでピーピーする子供を怒らないようにしていきたい。本人にとってどうしようもないことで怒るのは理不尽だろうから。
「食べるな」以外にも、「見るな」「触るな」という約束も子供は破る。最初から「見られない」「触れない」という状態にするべきだろうが、狭い家ではなかなか難しい…。
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時にはうっとおしく感じる子供の質問が、将来にわたって重要な役割を果たす p70
以前読んだ本(『伸び続ける子が育つ お母さんの習慣』『こんな働く母親が、子供を伸ばす! (扶桑社BOOKS)』のどちらか)で、「家事は今でなくとも週末にでも取り戻せるが、子供がその話をしてくれるのは今しかないかもしれない。優先すべきは子供の話。」という話があった。
子供の話には真面目に向き合おうと再確認した。
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好奇心は新しい情報から来る刺激によって無知を自覚させられた時に生まれる p81
つまり子供にはちょっとした知識をヒントとして与えるといいらしい。全部を教えすぎてもいけないし、知らなすぎても良くない、と。子供との会話で意識しておこうと思う。
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目標と経験のうち、モチベーションに重要なのは後者 p280
子どものお片づけを考えてみると、娘は今、片付けた後の気持ち良さと、私からの賞賛を目標にやっている。お片づけ自体を面白くする方法を考えてみるべきだろう(『仕掛学』を参考に考案中)。
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各所の要約と感想メモ
好奇心は歳と共にしぼむ
好奇心は個性ではなく環境に左右される
前者は自分への戒め、後者は子育てをする上で参考になる。
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赤ちゃんの新しいものに対する好奇心を「拡散的好奇心」という p26
『ことばと思考 (岩波新書)』という本に、この好奇心を前提にした実験があった。好奇心が出るかどうか(じーっと見たり、手を伸ばす)によって、ある二つの物体を同一のものと見ているか、あるいは別々のもの(2つ目に見せられた方が新しい)と見ているかを判断するというものだった。
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他人がどういう考えで言動をしているかを知りたいことを「共感的好奇心」という p28
子育てをきっかけに子供の言い分(他人目線)に興味を持つようになったが、これは共感的好奇心だといえそうだ。
他人目線をテーマに選んで読んだ本。
- 作者: ダニエル・タメット,古屋美登里
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/06/13
- メディア: 文庫
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- 作者: 伊藤亜紗
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2015/04/16
- メディア: 新書
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知的好奇心は認知症を遅らせるという実験結果がある p32
母にあげた『「ほら、あれだよ、あれ」がなくなる本 物忘れしない脳の作り方』にも、「常に新しいことを始めるといい」といったようなことが書いてあった。全部は読んでいない。
「貧乏でも知的好奇心があれば幸せ」という私の仮説は、心理面だけでなく身体面にも当てはまるようだ。
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人の進化や脳波から好奇心を研究したものについて p50
人は生きるための写真をDNAだけでなく先人たちの知識からも引き出す唯一の種 p52
山の向こうに何があるのか → 拡散的好奇心
そこで生きるための知識を授ける → 知的好奇心 p54
人は大人になり生きる術を身に付けてしまうと周囲から学ばなくなりがち p54
知識の先行投資を幅広く行うことが重要 p56
先を予測するのが難しい環境では一見無駄に思われそうな幅広く深い知識が重要になる p56
「好奇心格差」とは、最近言われている知識格差、情報格差、『「学力」の経済学』あたりに通じるのだろうか。
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幼児の好奇心は大人に対して依存状態にある p60
指差しや喃語に対する答え方については他の育児書で学んだ理解とほぼ同じ。こちらの方が実験の解説があり興味深い。アホな大人には赤ちゃんは何も尋ねなくなる、など。
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驚きが大きすぎても小さすぎても好奇心はわかない p79
すでにある知識が多すぎても少なすぎても好奇心がわかない p83
(好奇心がないように見える子供は、好奇心がないのではなく、単にその分野に対する知識がないだけかもしれない p84)
自信が大きすぎても小さすぎても好奇心はわかない p89
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情報の空白に好奇心が湧く。活用法は、映画、小説、営業、広告など。
犯人が分かって解決するパズル的なミステリー小説と、考察が必要なミステリー小説がある
パズルは答えがある、ミステリーは答えがない
本を読んだときの感想が変わりそう。パズルが解かれる(答えがある)ことを期待して最後まで読んだのにその期待を裏切られた場合、その本に対する評価が低くなりがちだが、もしかしたら逆にそれが良い影響(ミステリー)を与えてくれるのかもしれない。
今読み途中の『難解な本を読む技術 (光文社新書)』にも、「本文中に答えが書かれている哲学書と、答えを読者に考えさせる哲学書がある」と書いてあった。『これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)』でも、どちらの命を犠牲にするかといった問題への答えは書いてなかった。
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私たちはミステリーよりパズルを重視する文化の中で生きている。 p102
大学でさえ科学とは明快な答えのある疑問の集合であると考えている。
パズルはあらゆるところで使われている。政治や広告、ビジネスなど。
パズルは完全に的が外れている時でさえ、問題を解決する満足感をもたらすので危険 p103
ミステリーはパズルより難しいが持続性がある。
インターネットにはミステリーをパズルに変え、パズルを瞬時に答えが出る疑問に変える性質がある。 p104 小説の犯人を教えられると怒る人が多い一方で、Googleは究極のネタバレ装置である p106
Googleは頭でアレが知りたいと思っただけで脳内に情報をインストールするシステムを目指しているらしい。マトリックスか!そんな好奇心が失われる世界は嫌だ。これを逆手にとって、好奇心を失わせない検索システムというビジネスアイデアはどうだろう。「美とは何か」を検索したときに、答えを簡単に見つけられないようにするためには、どんな方法があるだろうか。
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ネットで好奇心の湧くまま次々とリンクをクリックしても知識は身に付かない、労力がない知識は身につかない p42
『ゼロ秒思考』でも同じようなことが書いてあった。インプット過多すぎて自分の意見が湧かない、と。(なので自分の思考を紙に書き出すのがこの本の主題。)
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苦労して学ぶ方が習熟度が高い。リンカン大統領の例など p108
スラムダンクの桜木花道は短期間でバスケの技術を身に付けたので、ラストで怪我をしたときにそれが失われるのは早いことを誰かが懸念していた。
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物語をたくさん読んでもらった子どもは他人の心を理解する能力が高い。共感的好奇心を発するため。p129
所得が低い家庭ほど、子供たちがデジタル機器にかじりつく時間は長い。p150
ほとんどの子供たちはコンピュータでAngry Birdsをプレイしたがっている。調べ物ではなく。
コンピュータは学力の差を縮めるどころか、時間の浪費の格差をますます広げる
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高所得層の家庭の子は質問をたくさんする。親から質問をたくさんされているから。p161
低所得層の家庭でされる質問は、好奇心とは関係ない衣食住についてがほとんど。
海外の成績の良い家庭に密着したところ、お母さんが絵本を読みながら「なぜこうなったと思う?」と子どもに質問していたニュースを前に見た。
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モンテッソーリなど、好奇心駆動型の教育がもてはやされている
しかし好奇心は知識の上に成り立つので、知識を与える形の教育も必要
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好奇心に成功は邪魔になる p230
アイデアは知識の融合から生まれる p234
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スペシャリストかジェネラリスト、今は二極化しているが、どちらも大事 p240
IBMでは広く浅くかつ一部だけ深い状態をT字型と呼んでいる p246
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「退屈会議」という人気イベントがある。平凡で身近なのに見過ごされているものをプレゼンする。p272
退屈なものは注意を向けないから退屈なのだ p276
毎日厨房で目玉焼きを焼いていた人が、白身の性質を突き詰めていった話
どんなに退屈なものでも、それを研究、開発している人がいるものだしね。
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好奇心は作業量や質を上げるが、時間制限がないことが条件。よって社員のモチベーションにそのまま使えない p282
自殺について。まだ何か好奇心があるうちは死ねない。見たい漫画のつづきとか p299
おわり。