プログラマー兼主婦の雑記

シングルマザーになりました。

アイデア大全のバグリストを試してみた

育休が終わり、職場復帰しました。ここいらで今一度仕事の仕方を見直してみようと思い、『鬼速PDCA』『アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール』に挑戦しています。

今回の記事は『アイデア大全』のひとつめのアイデアツール「バグリスト」の作業記録。何もないところからアイデアを沸かせるタイプのものです。良くないと思っていることを10分間で思いつくまま書き出し、頭をスッキリさせるだけでも良し、それらの不満点の改善策(アイデア)を考えるとなお良しとのこと。

myバグリスト

  1. 帰りの電車で座れない
  2. 仕事中、無性に何かが食べたくなる
  3. お気に入りのパンプスだと足が痛くなる
  4. 朝ごはんを定番化して楽になったのはいいけれど、飽きる
  5. 雨が降ると自転車で通園できない
  6. 雨が降るとタクシーを呼ぶのに時間がかかる
  7. 雨の日の朝のタクシーは渋滞で時間が掛かる
  8. 保育園の降園時にSの布オムツを紙おむつに交換するのが手間
  9. Sの帰り支度をしている間にAがうろちょろしていて危ない
  10. 部屋に絵本が散乱しやすい
  11. 泳ぐ時間が取れない
  12. 走る時間が取れない
  13. 映画を見る時間が取れない
  14. 最近舞台を見ていない
  15. 手芸で作りたいものがたくさんありすぎて進まない
  16. 新しい社員ともっと交流したい
  17. 在宅用に会社から支給されているパソコンの画面が小さい
  18. 在宅用に会社から支給されているパソコンの動きが遅い
  19. 会社のAdobe用PCの動作が悪い
  20. 夕飯が最近マンネリしている
  21. 春なのでもっと遊びに出かけたい
  22. Aにもっとかまってあげたい
  23. Aをもっと運動させる遊びをしたい
  24. Sをもっとかまってあげたい
  25. SにもAと同じくらいいろいろなことを教えてあげたい
  26. 仕事で勉強したいことがたくさんあってすすまない
  27. 英語もやりたいけど進まない
  28. 趣味のシステムも作りたいけど進まない
  29. 洋服がマンネリしている
  30. お風呂場がかび臭くなってきた
  31. 食器棚の新品のにおいがとれてきた
  32. 育休中の赤字生活を早く挽回したい
  33. 友達との飲み会にいけていない
  34. 運動不足でなまってる
  35. 仕事の時間がすぐ終わってしまう
  36. 新聞を読み忘れるときがある

感想

「何々できていない=何々したい」という欲求が多く出ました。とりあえず今の表面上の課題が見えた気がします。もう少し仕事の課題が見えてもよかったのですが…。

上述した不満点の改善策を考えるために、本書でこのあと登場するアイデアツールを使うといいかもしれませんね。

新書マップで話題のニュースをななめ読み

新書は流行やニュースを取り上げたものも多く勉強になりますが、たくさんは読めないので「新書マップ」というサイトの書評を参考にしています。

たとえば新刊新書のダイジェスト記事。
http://kaze.shinshomap.info/guide/index.html

「意識高い系」の研究 (文春新書)』なんて本があるんですってよ!(笑)こんな言葉はネット上だけのことかと思っていました。

気づきを得られたのは『子育て支援と経済成長 (朝日新書)』の紹介文。「保育園問題は当事者だけの話じゃない」という考えを得ました。「子どもがいないと将来の日本の担い手がいなくなる」といった先の話ではありません。今現在、私たちが使っているサービス/商品は、子供を預けている親が働いて提供してくれているのかもしれない、という気づきです。逆もまたしかりで、私たちのサービス/商品を買ってくれるのは、子供を預けて働いたお金があるからこそかもしれません。そう考えると、「障害者問題でも他の人の問題でも、経済活動をしている人の問題でさえあれば自分に無関係ではない」ということになるのでしょうか。

話題のニュースを扱った新書の紹介はこちら。
http://kaze.shinshomap.info/ask/index.html

震災6年、南スーダン、サウジ国王、豊洲、ヤマト…。連日目にする言葉ばかりです。次の更新時には森友学園問題が来るのではないでしょうか。

『翻訳百景』は読書の楽しさと英語の深読みの仕方を教えてくれる良書

読んだ本

翻訳百景 (角川新書)

翻訳百景 (角川新書)

読んだきっかけ

私の本業はプログラマーですが、手がけている仕事のひとつに翻訳(和英、英和、露和)があります。翻訳には3種類あり、それぞれ技術がまったく異なります。一番市場が大きいのが3番の産業翻訳で、私の仕事もこれです。通訳とは違い英語を話せなくてもできます(笑)。

  1. 映像翻訳・・・映画などの字幕や吹き替え
  2. 出版翻訳・・・海外小説やノンフィクションの翻訳
  3. 産業翻訳・・・契約書、マニュアル、特許などの翻訳

自分の翻訳力に満足できていないので、気になる本があれば読んで勉強しています。本書は本屋でたまたま見かけて購入しました。2016年2月発売。割と新しい新書です。この方の翻訳分野は上でいうと2番にあたります。

著者について

著者の越前敏弥さんは文芸翻訳家。存じ上げなかったのですが、映画になった『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』をはじめとする海外ミステリーや児童書の訳書、それから語学学習や翻訳技術を扱った著書があるようです。

著者インタビュー
http://www.cavapoco.com/trs-data/interview/echizen/index.html

訳書と著作リスト
http://www.cavapoco.com/trs-data/interview/echizen/bib_index.html

これは「自分自身で全作品にコメントをつけている唯一のリスト」(出版翻訳データベース: 翻訳百景)だそうです。

講演、イベント、読書会などの活動について
http://techizen.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/2017-0bf6.html

読書好きということで、読書や翻訳書の普及に努めているそうです。

この本からの影響

自分の翻訳と分野は違えど、翻訳についてのあれこれがとても参考になりました。それに加えて以下のさまざまな活動を知ることができてよかったです。

読書探偵作文コンクールは、作文以外のもの(たとえば絵や詩、手紙など)形式を問わずに受け付けているとのことで、とても楽しそうです。自分の子どもにも同じようなアウトプットを促してみようと思いました(現在4つの娘は、本や映画のワンシーンを気まぐれに描いている程度)。小学生になったら応募させてみたいです。

読書会も楽しそうです。近年ミステリー小説(というよりフィクション自体)を読んでいないのですが、時間配分の都合上優先度が低いだけで、読みはじめたらハマると思います。子どもが大きくなって自分一人で行動できる時間が持てるようになったら、水泳の再開に加えて読書会にも参加してみたいところです。

参考になった箇所の引用

第一章 翻訳の現場

目次より

  • 文芸翻訳の仕事
  • すぐれた編集者とは
  • 翻訳書のタイトル
  • 翻訳の匙加減

翻訳の仕事をしている人ならだれもが一日じゅう辞書を引きまくっている。キャリアが長くなればなるほど、思いこみによる誤読の恐ろしさが身に染みてわかるから、調べ物にはぜったいに手を抜かなくなるのがふつうだ。

なるべく直喩は直喩、隠喩は隠喩のままで訳すこと。

日本的すぎる訳語は避けること。

編集者をはじめとした客観の目を通さずに、質の高いものを作るのはきわめてむずかしい。

翻訳書のタイトルは訳者が決めると思っている人が多いようだが、実はそうではない。考えるのはおもに担当編集者で、会議にかけたり営業サイドの意見を聞いたりして決まるのがふつうだ。

文芸翻訳者としては、わかりやすい訳文を心がけながらも、原文が硬質のものは同じくらい硬質の日本語に、柔らかいものは同じくらい柔らかい日本語にするのが大原則だと考えている。

フィートやポンドのままで訳せば「わかりにくい、イメージが湧かない」と批判され、メートルやグラムに直して訳せば「英米人が使うはずがない、興醒め」と言われてしまう。

近ごろは中学生ぐらいでも、ポールやジェーンの性別がわからなくて、それが海外作品に親しめない理由のひとつになっているという。

わかる人だけわかればよいと割り切るスタンスと、万人がわかるように徹底的に説明するというスタンスがあり、訳文はその中間のどこかに着地させなくてはならない。

端的に言えば、原文が一文なら訳文も一文にするのが大原則で、よほどのことがなければそのルールを破るべきではない。

一文が長く、もってまわったかのような言いまわしを個性とする作家もいれば、細かく刻んでリズムを生むのが個性である作家もいる。それを無視したら、もはや文芸翻訳とは言えない。

中級ぐらいの学習者の訳文を見ていると、リズムよく切り刻んだ訳文を作るのが高度な技巧だと思っているらしい人がときどき見受けられる。現実には、一定以上のわかりやすさを保ちつつ、原文の粘っこさやしつこさを生かす訳文を作るほうがはるかにむずかしい。切り刻んでばかりでは逃げのテクニックしか身につかない。

ダン ・ブラウンの作品はどれも 、ひとつひとつの章が短く 、視点人物がめまぐるしく変わる形がとられている 。これはきわめて映画的な手法で・・・(中略)・・・訳文もまた映画的でなくてはならないが、それにはどうすればいいのか。簡潔に切れ味よく訳す、というのがひとつの答だが、もうひとつ、重要な鍵を握るのが、文末を過去形で訳すか現在形で訳すかということだ。

大ざっぱに言うと、客観(登場人物の動作や事物の状態など)を過去形、主観(視点人物の見たもの、聞いたこと、考えたことなど)を現在形にすると、うまくいくことが多い。

本書と同名の著者ブログ「翻訳百景」にも参考になる記事がありました。

第二章 『ダ ・ヴィンチ ・コ ード 』 『インフェルノ 』翻訳秘話

目次より

  • 『天使と悪魔 』と 『ダ ・ヴィンチ ・コ ード 』
  • 『デセプション ・ポイント 』と 『パズル ・パレス 』 、映画二作ほか
  • 『ロスト ・シンボル 』と 『インフェルノ
  • ドン ・ブライン 『ダ ・ヴィンチ ・コッド 』翻訳秘話

黒幕の正体が明かされるまでの百ページ程度の部分に、二重に解釈できる名詞・動詞・形容詞が何十も埋めこまれていて、訳語を誤れば作者の意図を台なしにしかねない。

次作の『ロスト・シンボル』からは、歴史的事実や科学の法則に明らかに反するような若干の単純ミスを除いて、訳文では調整しないことにした。物語を楽しんでもらうことが何よりも優先されるべきだからだ。

辞書にない新たな訳語を創出せざるをえないことは、小説の翻訳ではしばしばある。

原作の翻訳者が映画化作品に仕事で直接かかわることはきわめて少ない。

文芸翻訳と映像翻訳はまったく別の仕事である。そして映像翻訳でも、字幕と吹替では大きく異なる。

知的好奇心を刺激するタイプの翻訳ミステリーとして、『黒後家蜘蛛の会』『時の娘』『墜落のある風景』などをくわしく紹介した。

映画で先にラングドン(僕を使う)を知った読者のこともある程度考えて、『ロスト・シンボル』の訳文では、「わたし」を省略できるところはかなり削って減らしてある。

ほんの五、六年でコンピューターや通信のツールがあまりにも大きく進化したということだった。『ダ・ヴィンチ・コード』では、後半の暗号を解読するために大学の資料館へ出向き、データベースで十五分かけて検索するのだが、映画ではバスのなかでスマートフォンを使ってあっという間に答を出してしまう。『ロスト・シンボル』でもブラックベリーiPhoneが頻繁に登場し、ツイッターについての言及もあるため、わたしも話を理解するために訳出中にiPhoneを購入し、ツイッターもはじめた。

本筋とはあまり関係ないところで、作者は『神曲』がらみのちょっとしたことば遊びをおこなっている。これはあまりにもさりげないので、原書を読んだ読者の何分の一かは、おそらく気づかなかったはずである。日本語版については、最後まで読んだ人ならかならずその遊びに気づくように処理したつもりだ。

(パロディ本の『The Da Vinci Cod』は)ことば遊びが多いこともあって、訳書として世に出すのはむずかしいが、語学や翻訳のトレーニングには最高。

ある美術館で、口に巨大なタラ(cod)をまるごと突っこまれて窒息死した男の死体が見つかる。この難事件を解決すべく、警察から協力を要請されるのが、ロンドン大学アナグラム学者ロバート・ドングラン教授。本家『ダ・ヴィンチ・コード』と同じく、ちょっとした誤解によって事件に巻きこまれ、途中でさまざまな暗号を解読しながらの逃走劇が展開するのだが、その暗号や話の展開のばかばかしさ、くだらなさと言ったら……

「ドンカン」と訳してきた生徒がひとりいた。本家『ダ・ヴィンチ・コード』とちがって、間抜けなミスを連発する人物なので、「鈍感」に変えてみたという着想はおもしろいが、やはりパロディ作品であることを考えて、「ラングドン」からなるべく離れないほうがいいだろう。

東京のクラスで訳してきてもらったところ、おもしろい例として「ジャック・サウナニイール」

第三章 翻訳者への道

目次より

  • わたしの修業時代
  • なんのために学ぶのか

翻訳という仕事は知識や判断力や人生経験のすべてをつぎこんでおこなうものだから、「前史」が無関係であるはずがない。

日本語も含めた言語の構造や内外のミステリーの論理性に興味を持っていたことのほうが大きいと思う。翻訳の仕事には、徹底した調査に基づく謎解きの要素がかなりあるから。

読む速さより深さのほうがはるかに重要な翻訳という仕事

おおぜいの候補がいるなかで自分を選んでもらいたかったら、締め切りは「守る」ものではなく、「攻める」ものだと考えていたからだ。

中学受験専門の学習塾には、「中学受験の結果で最もよいのは〝努力して落ちること〟、二番目は〝努力して受かること〟、三番目は〝努力しないで落ちること〟、最も悪いのは〝努力しないで受かること〟」というモットーがあった。

著者がこの章の一部をブログで公開しています。

第四章 翻訳書の愉しみ

目次より

  • 全国翻訳ミステリー読書
  • 会読書探偵作文コンク ール
  • 「紙ばさみ 」って何 ?
  • 『思い出のマ ーニ ー 』翻訳秘話
  • ことばの魔術師 翻訳家 ・東江一紀の世界

二〇〇九年の秋から、翻訳者、書評家、編集者の有志が集まって、翻訳ミステリー大賞シンジケートというサイトを運営している。ひとりでも多くの読者に翻訳ミステリーに興味を持ってもらうために、ほぼ日替わりで書評や紹介記事を載せ、各種イベントの主催や後援をおこなっている組織

『ピザマンの事件簿』の読書会をピザ専門店で開催し、ディック・フランシスの競馬シリーズの読書会を競馬場で開催した名古屋。「翻訳ミステリーのABCからXYZまで」というサブタイトルをつけ、『ABC殺人事件』を皮切りとして、アルファベットにまつわる課題書を選びつづける福島。色にまつわる課題書を毎回選ぶ仙台。昼の読書会と夜の読書会を並行開催し、昼はイギリスの格調高い古典作品を紅茶専門店で、夜は現代の諸作品を公共の会議室などで扱う大阪。三か月に一度では足りないと言って、メンバーの一部が自主的に毎月スピンオフ読書会を開催している横浜。古民家で開催し、二次会はマジックバーへ繰り出す金沢。課題書にしようとしたルース・レンデルの『ロウフィールド館の惨劇』が絶版だと知ってもあきらめず、全国の読書会メンバーから募って二十冊以上を集め、みごと開催にこぎ着けた札幌。楽器博物館の見学後に『ヴァイオリン職人の探求と推理』の読書会をおこなった浜松。第一回をいきなり鵜飼と抱き合わせで開催した岐阜

小学生対象の読書探偵作文コンクールは、二〇一〇年にスタートして毎年おこなわれ、二〇一五年までに六回開催されている。

まず、形式が自由であること。課題図書はなく、作文の書き方にも制約はない。もちろん通常の感想文でもよいが、物語のつづき、登場人物への手紙、何作もの比較考察など、本を読んで頭に浮かんだことならなんでもかまわない。絵やグラフ、工作や音声ファイルなどで補足してもよい。

短期間に何人かの共同作業で翻訳を進める場合、大事なのはチームワークのよさと、まとめ役がいるかどうかだ。どんなに力のある人を集めても、そのふたつの条件が満たされていなければ、意見が食いちがって収拾がつかなくなり、たとえ期限までに仕上がったとしても、訳文の質はきわめて低くなる。もちろん、明確な師弟関係がある場合はその二点に問題はない

原文を深く読みこんで考え抜くことと、日ごろからことばの豊かなストックを作っておくこと。そのどちらが欠けても、こんな訳語はひねり出せない。

thoughtfullyに対しては、最初の「頭の隅では」と中ほどの「十二分に」があてられている。一語一語を訳したというより、文全体の意を汲んで、自然にそのような処理になったのだと思う。これもまた、なかなか真似のできない高度な技巧

thoughtfullyという語の訳しづらさは、文芸翻訳に少しでも取り組んだことがある人ならだれもが知っている。辞書にいくつか訳語が載っているが、どれひとつとして使えたためしがない。毎回毎回、文脈に沿ってそのつど考えなくてはいけない厄介な単語だ。

関連して読みたい本

著者の翻訳技術本を2冊。

次も翻訳技術本。『英和翻訳基本辞典』について: 翻訳百景より。これは買いたい。

英和翻訳基本辞典

英和翻訳基本辞典

『絵本翻訳教室へようこそ』: 翻訳百景より。読みやすい絵本については『えほんのせかい こどものせかい』がよかったので読み比べてみたい。

絵本翻訳教室へようこそ

絵本翻訳教室へようこそ

six words について: 翻訳百景より。

Six-Words たった6語の物語

Six-Words たった6語の物語

『知的創造の作法』を読んだら阿刀田高さんのブームがきました

短編小説家である阿刀田高さんのアイデア本を読みました。

知的創造の作法 (新潮新書)

知的創造の作法 (新潮新書)

読んだきっかけ

阿刀田さんのことは知らなかったのですが、池上彰さんと佐藤優さんの共著『僕らが毎日やっている最強の読み方;新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』にて、古典などの教養をかいつまんで上手に教えてくれる作者として紹介されていました。そこで『シェイクスピアを楽しむために (新潮文庫)』などを購入する過程で見つけたのがこの本でした。

作者について

  • 本書の時点(2013)で70歳超え
  • 本書によると、アイデア満載の短編小説を900本も書いたらしい
  • (見える幽霊ではなく、匂う幽霊の話など)
  • 旧約聖書、新訳聖書、コーランのダイジェスト本が人気

読書レビュー

70歳を超えて、こんなに簡潔でおもしろい文章を書けるというのがまずすごい!文章からもっと若い人を想像して読んでいました。本を読む前に著者の年齢までは調べていませんでしたので…

でも、なるほど、「つとに知られている」のような、懐かしい(古風な?)言葉がときどき出てきます。「つきづきしい」という言葉は初めて知ったので調べたところ、阿刀田さんの口癖なのでしょうか、他の本にも頻出するそうです(他ブログ参照)。

p15 夫婦愛などもつきづきしい
p48 比喩的なダイジェストとしてつきづきしい
p52 飲酒主義を要約してつきづきしい

「たけだけしい」と語呂が似ていますね。「似合っている」といった意味だそう。

阿刀田さんのアイデア作成メソッドは、私なり表現すれば、

知識+目的+個人(着目の仕方)→アイデア

著者の知識に著者なりのダイジェストをすると、古典は次のように解説できるとのこと。

p25
旧約聖書イスラエルの建国史
新約聖書イエス・キリストの伝記
コーランは偉い親父の説教

イデア発想はセレンディピティ次第。セレンディピティとは、努力すると現れる「棚からぼたもち」のこと

いろいろな知識や既存のものを着眼点を変えて組み合わせるという彼の手法は、他の人も書いているアイデア作りの王道ですが、それを小説に発展させているのが新鮮でした。

この本の影響

阿刀田さんのアイデア小説の発想秘話を読んでいると、自分でも何か話やネタを書きたくなってきてしまいます。そこで、子どものおもしろい行動と自然界の生き物を結びつけた話or図鑑を考えてみました。0歳だったうちの息子は誰もいないところへ向かって「いないいないばあ」をしていたのですが、そういう虫とかいないかな、って(笑)

また、今まで苦手としてきた分野の知識・教養にも興味が出たので、阿刀田さんの「知っていますか」シリーズを読んでいくことにしました。

関連して読みたい本

作中で紹介された書籍の中から。

「進次郎にみるプレゼン力」の章がおもしろそう。

明日物語 (文春文庫)

明日物語 (文春文庫)

著者が紹介した『発明の母』が収録されている本。

以下教養。

シーシュポスの神話 (新潮文庫)

シーシュポスの神話 (新潮文庫)

サン・ジェルマン伯爵考

サン・ジェルマン伯爵考

新編 算私語録 (朝日文庫)

新編 算私語録 (朝日文庫)

↑画家で絵本も描いている方です。
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

↑先日読み終わった『不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生』の関連本としてAmazonでチラチラ見かけていました。まさかここでつながるとは。
旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

新約聖書を知っていますか (新潮文庫)

新約聖書を知っていますか (新潮文庫)

コーランを知っていますか (新潮文庫)

コーランを知っていますか (新潮文庫)

ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)

ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)

本に挟まっていたチラシより。

交通事故学 (新潮新書)

交通事故学 (新潮新書)

今読んでいる関連本

シェイクスピアを楽しむために (新潮文庫)

シェイクスピアを楽しむために (新潮文庫)

ロウソクの科学 (角川文庫)

ロウソクの科学 (角川文庫)

『不死細胞ヒーラ - ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生』は小説のようなノンフィクション

読んだきっかけ

少し前に、癌つながりで2冊の本を読んでいました。

「余命3カ月」のウソ (ベスト新書)

「余命3カ月」のウソ (ベスト新書)

本屋で見かけて手にしたもので、「癌は治療しないほうが余命が長くなる」という主張をする先生の本です。

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)

「ああ、私が10人いれば、すべての療法を試してみるのに」という言葉が目に留まって購入しました。ロシア語通訳者であり作家でもある女性の書評日記です。

こういった本を読みながら、癌や生死について考えていたときにふと、「自分の精神以外の部分が永遠に生き続けること」について思いつきました。自分の死後に細胞だけが生き残っていたら、それは自分であって自分でないのか…。哲学は苦手ですが、そんなことをふと思ったのです。

  • 人間の細胞だけが生き続けることは実際ありえるのか
  • もし細胞が生き続けていたらどういうふうに扱われるのか

これを解決してくれる本を探して見つけたのがこの本でした。

不死細胞ヒーラ  ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生

不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生

読んでよかったです。新しい世界を見ることができました。

本書の概要

この本では、章ごとに以下のトピックのどれかが登場し少しずつ全容が明らかになっていきます。章ごとに年代や主要人物が変わるので、まるで小説のようです。

  • 著者がこの本を書くまでの長期にわたる取材記録
  • 不死細胞ヒーラの持ち主であるヘンリエッタの人生
  • ヘンリエッタの時代の医療、科学、法律
  • ヒーラ細胞の功績や影響
  • ヘンリエッタの子孫(特に著者と深く交流した次女のデボラ)
  • 現在の医療、科学、法律

翻訳書ですが、不自然な訳もなく、堅苦しくなく、読みやすい本でした。高学歴ではないヘンリエッタの家族のためにも、原著自体が読みやすいように書かれているのかもしれません。

著者はこの本を書くために人生の大半を費やしたそうですが、よくこんなに調べ上げて、よく体系立てた文書に落とし込めたものだと感服します。読み終わったあと、『白夜行 (集英社文庫)』の読後のような、ふわふわとどこかへトリップした感じを抱きました。

ヘンリエッタやデボラのヒューマンドラマとして読んでもいいし、黒人に対する差別の歴史として読んでもいいし、科学や医療の発展の歴史として読んでもいいと思います。

「科学・医療の進歩 vs 人権・プライバシー・倫理」に関する双方向の意見は考えさせられます。

読書前&読書中に浮かんだ疑問と解答

Q. 人間の細胞だけが生き続けることは実際ありえるのか

ヘンリエッタ・ラックスという黒人女性の癌細胞が生き続けている。

(ということをあらすじ及び序章で知りましたが、この本で尚も「癌」について触れることになるとは思っていなかったので、少し衝撃を受けました。)

Q. もし細胞が生き続けていたらどういうふうに扱われるのか

体外で生き続ける細胞というのがそれ(1950年頃)までなかったため、ヘンリエッタの不死細胞(ヒーラ)はとても貴重な大発見だった。増殖し続ける彼女の細胞は世界中の研究者に分配され、さまざまな研究に役立ってきた。現在ヒーラ細胞は重さ5千万トン(推定)を超え、大半の人がその恩恵を受けている(ポリオワクチンとか)。

家族にとっては母親がまだ生きているような不思議な感覚がある。遺体を解剖されるのを嫌がる気持ちに似ていると感じた。研究者は細胞の持ち主のイニシャルをとって「HeLa(ヒーラ)」と呼んでいるので、持ち主の人生や人格まで考えを及ばす人は少ないようだ。

Q. ヒーラ以外に不死細胞はあるのか

同じく持ち主のイニシャルをとった「A.Fi」「D-I Re」などと呼ばれる細胞が後年発見されたが、ヒーラのように大量増殖していない。

正常な細胞はあらかじめ決まった回数分裂すると死ぬようにプログラムされている(ヘイフリック限界)。ヘンリエッタの癌細胞(ヒーラ)にはその回数制限がないため死なない。現在の技術では、正常な細胞をある特定のウイルスや化学物質にさらせば人工で不死細胞を作り出すことができる。しかしヘンリエッタの細胞のように自力で不死化する細胞はほとんどない。

Q. 売買される細胞の印税のようなものが持ち主や家族に支払われるのか

一切支払われない。さまざまな議論があった(今もある)が、法的には持ち主を離れた細胞についてとやかくいう権利はない。

奴隷時代の名残りがあったせいで、当時黒人は病院にかかりづらかった。無料で診てもらえる福祉サービスもあったが、患者に内緒で人体実験をされることも多かった。そんな研究で得た収益の還元なんてあるはずもなかった。

Q. ヒーラ細胞は癌細胞なので、バイオテロができるのではないか

ネズミにヒーラ細胞を注射した実験によると、ネズミは癌を発症する可能性があるようだ。人への感染の可能性は不明。

白血病の女性十数名に対し、内緒でヒーラ細胞を注射した研究者がいた。当時は患者である被験者に同意を取らない実験が横行していた。癌を発症した患者がいたが、もともと癌を持っていたようだ。

健康体への実験では刑務所で被験者が募集されることが多かった。罪滅ぼしのために受けたりするようだ。健康な被験者は癌を発症しなかった。

音声入力とバレットジャーナルを使った献立の立て方

みなさんは献立を決めてから買い物に行きますか。食材を買ってから献立を考えますか。向き不向きがあると思いますが、私は後者です。

献立を決めるのが先 買い物に行くのが先
メリット 献立が偏らない
余計なものを買わない
安い食材を買える
作る直前まで献立を考えなくても何とかなる
デメリット 食材が売っていないかもしれない
食材が高いかもしれない
無の状態から献立を立てるのは大変
献立が偏りやすい
食材が余りやすい
献立に足りない食材は、
代用するか買い足さなければいけない

みなさんは毎日買い物をしますか。週に一回まとめてしますか。こちらも人それぞれだと思いますが、私は後者です。

毎日買い物に行く まとめて買い出しをする
メリット 魚介類など足の速い食材を使える
今日あれ食べたい!が叶う
買い出しが一度で済んで楽
余計なものを買う回数を減らせる
週末にゆっくり買い物できる
都合がつけば旦那に車を出してもらえる
デメリット 毎日買い物に行く時間がない
余計なものを毎回買ってしまいそう
平日は一人で子ども二人を連れて出歩かなきゃいけない
何日分もの献立の見通しを立てないといけない
結局足りないものを買い足すことになるかも

というわけで、まとめて買い出しをしてから献立を立てる私の方法を以下に書きます。もしかしたらこの先変わるかもしれないので、自分への備忘録も兼ねて。

1. 買い物をする

水曜日に生協で常備品が届きます。主に朝食用で、切らしたくないものを定期配送しています。

  • 牛乳
  • 豆腐
  • 納豆
  • ヨーグルト
  • 食パン
  • ウインナー
  • 米や調味料(なければ)
  • その他

週末にスーパーで夕食の食材を5〜6日分買います。その日安くなっているものをメインで、4000円くらい。作りたいものがあれば別ですが、この時点では献立をあまり意識していません。

  • 肉4〜5パック(豚、鶏、ひき肉など)
  • 気が向けば魚介類
  • 野菜類
  • 練り物、こんにゃくなど
  • 食パン(買い足し)
  • 気が向けば果物

参考までに現在の家族構成と、家で食べる(食費で賄う)もの。

夫:夜ごはんのみ (朝食抜き、昼は自腹)
自分:朝ごはんと夜ごはん(昼は自腹)
4歳児:朝ごはんと夜ごはん(昼は保育園の給食)
1歳児:朝ごはんと夜ごはん(昼は保育園の給食)

2. 食材をリストアップする

買ってきたものを片付けたら、iPadのメモ帳を開いて音声入力を開始します。そして冷蔵庫の中のものを読み上げます。

「にんじん、改行、ダイコン、改行、ブロッコリー、改行…」

子供たちが笑いながら見てきますが、無視してひたすらiPadに話しかけます。レシートを使えばいいじゃん、というツッコミは無しでお願いします(笑)。先週からの繰り越し食材もまとめて目で見ておきたいので。ツナ缶や乾物などの常備品は飛ばします。

すべて入力したらiPadからノートに食材を書き写します(写真の左半分)。

  • 肉や野菜などだいたい種類ごとに書く
  • 食材名の頭には空のチェックボックスをつける
  • 足が早い食材など優先的に使いたい食材には*印をつける
  • 使いたい乾物などがあったらそれも書いておく

私はバレットジャーナルという手帳術を取り入れているので、いろいろなものをノートにリストアップしています。献立もそのひとつです。

3. 今週のレシピ本を決める

いちいち探す手間が省けるように、一週間は同じ情報源から献立を決めます。クックパッドならクックパッドオレンジページ◯号ならそれオンリー。

4. 献立を考える

食材を見ながら献立を決めます。我が家は一汁二〜三菜なので、メイン、サブ、汁を5食分程度考えます。サブや汁は当日その場で適当に作れるので、足りなくても大丈夫。週末は外食することもあるし、余った食材で1日くらいやり過ごせるので、7食きっかり考えなくても大丈夫です。とりあえず忙しい平日の分が考えてあればOK

写真右側が考えた献立です。

  • 献立名の前に分類を書く
    • メ・・・メイン
    • サ・・・サブ
    • 汁・・・汁物
    • 主・・・主食(炊き込みごはんなど)
  • 献立名の前にチェックボックスを書く
  • レシピ本から引用した献立にはページ番号を書いておく
  • クックパッドの場合は履歴に残るので不要)
  • 簡単なレシピならノートに概要を書いておく(タレの配合とか)
  • (いちいちレシピ本を見返さなくて済むように)
  • 使用した食材のチェックボックスに斜線を一本書く
  • 使い切る予定の食材のチェックボックスは斜線二本で×をつける

毎日レシピ本を見るのは面倒なので、何も見ずに作れる定番ものも入れます。野菜炒めとか唐揚げとかハンバーグとか湯豆腐とか…。

バレットジャーナル使いはバーチカル(縦型)の週間予定表に献立を書いておく人が多いですが、私は食べる日付までは決めません。余る献立もあるし、割と適当。

5. 料理を作る

夕方までの間にノートを開いて、色や味のバリエーションがかぶらないように一汁二菜を選び、チェックボックスに×をつけます。おひたしやサラダなど簡単なものを(残りの献立に影響が出ない範囲で)作れそうであれば追加します。

おかずの色がかぶりそうなときは、人参を入れればたいてい解決します(笑)。

おかずの味がかぶりそうなときは、メインかサブの味付けを変えます。野菜炒めであればバリエーションが結構ありますよね。野菜炒めは平日時短の神!ごはんを早炊きしている間に作れますからね。

胡椒 醤油 味噌 みりん ウェイパー 鶏ガラ オイスターソース ニンニク 唐辛子
1
2
3
4
5
6
7

1番はシンプルなので豚バラセロリのようなクセのある食材に合います。2、3番は最近ご無沙汰です。4番はチンゲンサイやシーフードに片栗粉でとろみをつけてよく使います。5番はブロッコリーの蒸し炒めが多いです。ウインナーかベーコンがあるとベター。6番は最近のお気に入りです。7番は豚肉によく合います。

うちは子どもがいるので、豆板醤や七味は各自で取り分けたものに後付けします。

時短といえば焼き魚もすきですが、旦那が魚より肉派なのであまり登場しません。登場するときはブリ大根のようなこってりめ。なので魚は昼食で取るようにしています。子供たちにはしらすやシシャモが多いかな…。

おまけ 常備菜について

週末は子供とがっつり遊んであげたいので、時間をかけて常備菜作りに没頭することはありません。短時間で何種類も作るテクニックも持ち合わせていないですし…。

代わりに以下のようなことで少しずつ時短をしています。

  • その日の夕食を作りながら別の野菜も刻んで袋に入れておく
  • 解凍した肉の半分を調味料に漬けて冷蔵庫に入れておき翌日使う
  • 野菜を多めに茹でて翌日使う
  • きんぴらを作るなら大量に作って2、3日使う
  • (朝食にきんぴらとチーズのトーストもおいしいです)

夕食でご飯が余れば冷凍するか、ジャコやゆかりなどでおにぎりを作って朝食に回します。それ以外の朝食はパン派で、定番メニューにしています。

おしまい!

『日本語と外国語』を読めば日本語をもっと好きになる

こちらの本を読みました。

日本語と外国語 (岩波新書)

日本語と外国語 (岩波新書)

先日読んだ『ことばと思考 (岩波新書)』にて、この本の内容が何度も引用されていたので原典にあたりました。

著者は大正生まれの言語学者。大学教授も兼任している方です。著作多数。

タイトルから日本語と外国語の違いを淡々と書いてあるだけかと思っていましたが、後半に行くにつれて内容が深みを増して面白くなりました。読了後に調べたところ、著者の主張は日本語の世界地位向上とのこと。最近の日本国内では小学校にまで英語教育が降りてきて英語崇拝ムードが高まっていますが、その反動で日本語をおろそかにしてはいけないな、と、この本を読んで日本語の重要性を再確認しました。

第1章 ことばで世界をどう捉えるか p1

わかりやすく、雑談ネタになりそうな話から始まっています。『ことばと思考』で引用された茶色のタクシー(orange taxi)や、 リンゴのような(日本語:赤い/仏語:丸い)ほっぺ、黄色い太陽に白い月など。

日本ではいいイメージの太陽ですが、暑さに苦しめられている地域では太陽は悪しきものだそう。商品パッケージに太陽の絵が描いてあるだけで商品が売れなくなった例が挙げられていました。

第2章 虹は七色か p59

虹の色が国によって異なることは知っていましたが、まさか虹だけで50ページ近くも書けるほど深く調査しているとは驚き桃の木山椒の木。

第3章 日本人はイギリスを理解しているか p105

外国では人の往来により外国語を学ぶため、話せても書けない人が少なくない。
日本では書物で外国語を学ぶため、書けても話せない人が少なくない。
(意訳)

英語を知っていても、英国人と関わり合いがないと彼らについてほとんど知らないことになってしまうので、英国人の考え方や習性が紹介されています。

これに関連して、以前から読みたいと思っている本があります。

英米人のものの見方を理解するための教養の英語

英米人のものの見方を理解するための教養の英語

日本語で「そんなの裸の王様だよね」と言った時に、日本語が理解できても「裸の王様」が何(の比喩)かが分からないとセリフの意図を理解できないのと同様に、英語で前提となっている宗教や歴史を学ぶ必要性をひしひしと感じています。

第4章 漢字の知られざる働き(1) p127

この章から日本語の独特性がふんだんに解説されていて興味深く読みました。

日本語は難しい言葉でも漢字の組み合わせから意味を推察できるが、音を聞いただけではそれが難しい。その理由は、その音はたいていのばあい中国語由来の音読みで、日常使う訓読みの言葉とは違うから。文字にした途端に、音読みの単なる音と訓読みの意味が結びつき理解できる。(意訳)

たとえば「ソウショクセイ」と「蜂食性」。後者は「蜂」を「食」べる「性」質だとわかる。英語のばあい、「apivorous」はラテン語の「apis(蜂)」と「vorus(食べる性質の)」の組み合わせなので、普通の人は意味が全く想像できない。

これは本書に添付されている、英単語の由来となるラテン語の一覧(一部)です。わーお。

日本人は「貧血」「白血球」「鼻炎」「乳酸菌」といった言葉が普通の会話で出てきますが、それらの単語を知らない英語人はどうやって会話をしているのでしょうね。私は以前海外で膀胱炎にかかったことがあり、医療関係ではない現地の人に「cystitis(膀胱炎)だった」と言いましたが、伝わりませんでした。「bladder(膀胱)が悪くなった。お腹の下の。おしっこ関係のところ」という表現で伝わった(のか?)と記憶しています。難儀だ。

そんな風に役立つ日本語の音訓読みの面白さを英語人に紹介するときに使える例がある。これらの言葉のラテン語読みが日本語の音読みにあたり、英語読み(意味による当て字)が訓読みにあたる。(意訳)

なるほど。目から鱗が落ちました。

略語 英語読み
e.g. for example
i.e. that is
etc. and so on
vs against

第5章 漢字の知られざる働き(2) p165

日本語は抽象的で、英語は具体的である。日本語では「とる」で済まされる動作が山ほどある。漢字に変換すれば「取る」「撮る」「摂る」「採る」「獲る」と具体化されるが、英語の場合はもっと細かい。(意訳)

これは本書に添付されている対応表の一部です。

日本語で会話する人は聞いた言葉の漢字を頭の中でイメージしているため、漢字表記を知らないと会話が理解できない。これが他言語に比べて文盲が少ない一因となっているはず。(意訳)

この考えには納得しました。日本ではほとんどの人が字を書ける理由に教育水準の高さがあげられることが多いですが、言語の特徴にも一因がある可能性があるんですね。

情報源は別ですが、日本は選挙を筆記で行うとても珍しい国なんだそうです。多くの国はチェックボックスマークシート。なぜなら文字を書けない人がいるからです。さらに文字を読めない人のために、テーマカラーと紋章のようなものも描かれます。これを初めて知ったときはカルチャーショックを受けました。

関連して読みたい本

ことばと文化 (岩波新書)

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著者の本で一番有名で評価が高いらしい。

閉された言語・日本語の世界 (新潮選書)

閉された言語・日本語の世界 (新潮選書)

こちらも著者の本。

著者による日本語の国外地位を高めるための本。日本語ラブ。