プログラマー兼主婦の雑記

シングルマザーになりました。

働き方改革 4冊目 草の根運動は『働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 』から?

前回読んだ本では「国の制度は先に変わらないので、自分たちから変わるべき」とありましたので、自分の変え方を書いた本を紹介します。

ずっとバリバリ仕事をしていた方が、ライフワーク・バランスを見直し定時上がりをすることになった自伝書かつ指南書です。

読んで損はないと思いますが、自分にはあまり大きな影響はありませんでした。なにせ、もともと時短勤務で定時上がりですし、作業記録や業務効率化は実施済み。どちらかといえば時間外業務が多い夫向けですね。

それから文章が情緒的で冗長で自分にはなじみませんでした。たとえば「……と決心をしながら、窓の外の夕焼けを眺めた。いつもよりひときわ美しく感じた。」というような文章がとても多いです。

じゃあ勧めるなって?lol

人口減少とは、今まで11人でやっていたサッカーチームを9人にして他の国と戦ってくれということ

この例えはうまいと思いました。

政府が「カエル・ジャパン・プロジェクト」なんてやっているが認知度が低い

私も初耳です。

裁量権がない仕事はつまらないので、自分(夫である著者)の家事に裁量権をもらった

それで著者が食器洗い乾燥機を買ってしまうのはいかがなものかと思いましたけれどね(笑)。

私は家事分担よりも家事シェア派です。気づいた人や時間のある人がゴミ出し、洗い物、お風呂掃除といったことをやるのが理想です。現実はゴミ出しだけ旦ry

そういえば独身バリバリの7年前はこんな本を評価していました。

プロの残業術。 一流のビジネスマンは、時間外にいったい何をしているのか?

プロの残業術。 一流のビジネスマンは、時間外にいったい何をしているのか?

今でも内容には賛同しますが、有用度はほぼゼロです。私が2人いたら、兼業主婦ではなくて、独身キャリアウーマンと専業主婦の両方の人生を歩みたい。

働き方改革 3冊目『ルポ 父親たちの葛藤 仕事と家庭の両立は夢なのか』の答えは業績目標次第?

男性の家庭進出なく女性の社会進出はない、ということで…

昨年2016年に出たばかりの本です。著者は前回読んだ『忙しいビジネスマンのための3分間育児 (ディスカヴァー携書)』と同じ"おおたとしまさ"さん。彼の文章は読みやすいです。

本のタイトルに対する答えだと思う箇所を要約しました。

  1. イクメンでも業績が上がる(下がらない)」を前提にするとみんな辛い(43ページ)。残業0、あるいは育休をとれば業績は下がるのが普通。受け入れよう (45ページ)
  2. 男性でも育休や退職ができる環境にして、「女性はリスク」を「男女ともにリスク」という意識に変えていく(163ページ)
  3. 国の制度ありきでは変われない。どんな社会通念も現場から変わっている(190ページ)

1つめの要約についての私見。

「定時上がりでも好成績」「主婦が部下になっても業績改善」といった取材記事やブログ記事は多いです。好成績だから、業績アップしたから、だから定時上がりでも主婦でもいいんだよ、という主張。これってやっぱり心苦しいですよね。誰でもできることじゃないし、自分が達成しようと思ったら私生活(家事育児)が削られます。そりゃ、できるならバリバリ働いて認められたいですが、時間という物理量が同僚にかなわないのです。

2つめの要約についての私見。

昔は入社面接で「結婚(or子作り)しますか」「結婚(or妊娠)したら会社を続けますか」という質問を女性にしていましたよね。私も何度かされました。今こんな質問をしたらセクハラ(男女差別)だとはいいますが、「女性はリスクである」という考え自体は全くなくなっていません。だって事実だもの。

現に私の会社は男性が結婚すると給与アップしますが、女性が結婚すると給与ダウンします。男性の場合は「妻子を養うんだから頑張れよ」という景気付けで昇給したりそのチャンスがもらえますが、女性の場合は育児で出社可能時間が減る上に仕事内容の重要度を落されるので、結果として給与ダウンしたあと何年もかけて細々と回復していきます。2回出産すれば5年〜10年同僚に遅れをとりますよ。

仕事量が減る(or辞める)リスクはもはや子育てだけではありませんよね。子育てが終わったら介護ですよ。これらを女性だけに押しつけるのは本当にやめませんか。本書によると、国の調査項目にすら、男性に対するアンケートで結婚/妊娠/出産後の働き方の選択(転職や退職など)がないそうです。つまり国は「男性は結婚しても妊娠しても出産してもキャリアに影響が出ない」と見なしているんですね。

3つ目の要約についての私見。

国の制度を先に整えることは難しいのでまずは草の根運動から、とのこと。そして仕事と育児の両立ではなくて、仕事と育児の割合を選択可能にするのがいい、と。まさにダイバーシティ。嗚呼、言うは易し。でも声をあげて、情報交換や話し合いはしていこうと思っています。動いたら必ず成功するわけではないけれど、成功するためには必ず動かないと始まりませんものね。

関連して読みたい本

働き方改革 2冊目『忙しいビジネスマンのための3分間育児』は女性でも役立ちます

1冊目はこちら。

昨年末、『忙しいビジネスマンのための3分間育児 (ディスカヴァー携書)』という本を読みました。著者の"おおたとしまさ"さんは育児や教育のジャーナリスト。父親のための育児相談サイトや講演会をひらいていて、ほかにも著作があります。

この本には「短時間しか(or ほとんど)子供と関われない父親でもできること、および男親の役割」がメインで書かれています。「短時間しか子供と関われない」というところは兼業主婦でも当てはまるので、私にも使えるアドバイスがありました。

  • 家族時間を充実させたいのであれば、まずは量より質を高める
  • うわの空で接することはやめる
    • 子供は「自分は片手間で対応される程度の存在なんだ…」と思ってしまう

私も時間がないからこそ、ついつい何かしながらの「ながら育児」をよくやってしまいます。定期的に意識して気を引き締めないとなかなかその習性は正せません。そういう意味では、すべての育児書にこのことを書いておいてほしいですね。読むたびに思い出せるように…。

次は男親の役割について。

  • パパはふたりめのママになるべからず

男親の方が得意なことがいろいろと紹介されていました。「ママには内緒だよ」という魔法のことばなんかも(笑)。

  • パパはときにはママに怒られることを覚悟の上で、子供と遊ぶのもあり
  • 両親の考え方は違ってよい
  • 子供を親の思い通りに育てたいなら両親の考えを統一するのもよい

この辺りは私もよく気をつけているところです。2人で同時に怒らない、アメとムチ。2人で同時に片方の子供を構わない、分担。など。

ほとんど子供と関われない父親が子供にいい影響を与えるための方法とは。

  • 子供と会えたら毎回、「今日も会えて嬉しいよ」と言う
  • 子供と会えたらハグをする。ハグで自分が元気になれることを言葉で子供に伝える。
    • 子供は「自分も辛いことがあったらギューしてもらえばいいんだ。」と思える
  • 楽しい出来事があるたびに「今日はこのことをパパに報告しよう」と思わせる
  • 子供と会えない生活の場合、ママと良好な関係を保つことは間接的に子育てをしているといえる

この辺りの独特なアドバイスには膝を打ちました。

3番目は母親が子供に働きかけてもいいかもしれませんね。「お父さんが帰ってきたら教えてあげよう?」って。

4番目は、母親が充足していれば子供へも適切な対応をする余裕ができるという意味で、「間接的な子育て」とは的を得ていますよね。妻の満足度は夫の家事育児量ではなくコミュニケーション度合いだっていいますからね。

よくある積み木の有用性やゲームの誘惑などについても書かれています。

夫婦喧嘩へのアドバイス目から鱗でした。

  • 夫婦喧嘩で結論はいらない
  • 勝負もつけない
  • 言いたいことを言い合うだけでオーケー
  • その後お互い無意識に妥協し合うようになる

関連して読んだもの

読んだのでレビューを書きます。
→書きました!

着眼点は面白いですが、私は本書の方が役に立ちました。パパのタイプ診断や、タイプ別取り扱い方もありました。男の人の考え方は勉強になりましたが、ちょいとステレオタイプかな。

関連して読みたいもの

遊びを通じた能力開発だそうです。

有名ですが未読。ここでこの本につながるとは…。夫婦喧嘩後の無意識の妥協に関連する書籍です。

知的生産の本にいたるまでと読んだ本

昨年秋頃から自分の読書ジャンルに「知的生産」が追加されました。

本を読んで実際に行動していることもあり、生活が改善されたと思っています。育休中のため仕事に活かせていないのが残念ではありますが、始めてまだ半年未満、今はまだ種まきの段階だと考えて地道に続けていくつもりです。

もくじ

万年筆からノートへ

当ブログ一本目の記事に書きましたとおり、きっかけはAmazon読み放題の影響で万年筆を再開したことでした。

万年筆からノートへと興味が広がり、ノートの役割である「知的活動」に注目するようになりました。

情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]

情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]

今のところ、こちらの「一冊のノート術」とBullet Journalを軸に以下の情報を管理しています。

  • (今年/今月/今日の)スケジュール
  • 家計簿
  • 毎週の献立
  • TODO、進捗管理
  • 読書メモ
  • 気づきメモ
  • イデアメモ
  • 勉強メモ
  • 企画・デザイン(ウェブサービス、LINEスタンプ、knitting patternsなど)

ただし、以前からデータ化している、長期的に記録をするものはオンラインGoogleスプレッドシートで引き続き管理します。

  • (今年/今月/今日、以外の)スケジュール
  • 公共料金(10年分たまっています)
  • 給与明細(同上)
  • あげた・もらった年賀状、プレゼント、お金

ノートから知的生産へ

ノート術を調べていると、「知的生産」というものに大きな関わりがあることが見えてきました。そして大御所だと勧められている本を読み、「自分は日々見聞きするものをなんて無駄に見逃していたのだろう」と衝撃をうけました。

でも、何事も始めるのに遅いこたーない。今からでも読みましょう、実践しましょう。

1冊目『知的生産の技術』

1969年刊行。「知的生産」という言葉はこの辺りから始まったそうです。

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)

メモを書くのは覚えるのではなく忘れるため
見返す時には忘れているので未来の自分=他人に向けて書く
物事はなるべく記憶するのではなく記録するのが知的生産する人の基本的心得

学校では覚えるために授業のノートを書いたものですが(おおざっぱなので板書コピーはしませんでしたけれど…)、社会生活ではその逆だということにハッとしました。

整頓とは見た目がきれいなこと
整理とは必要な時に取り出せるようになっていること

情報については整頓よりも整理が重要だと意識するようになりました。

「京大型カード」という大きめのカードを使った情報整理術を中心に、いろいろなテクニックや心構えが紹介されています。日記についての話もあり。

ひらがな入力ローマ字入力の発端といった、戦後の知的活動の移り変わりが読めるのも面白いです。

読みたい関連書籍

『知的生産者たちの現場』

知的生産者たちの現場 (講談社文庫)

知的生産者たちの現場 (講談社文庫)

著者界隈の秘書さんだったかな?「私の身近のすごい人たちを観察したところ…」といった内容だと推定。

2冊目『アイデアのつくり方』

こちらもこの分野では古典的な本らしく、和書でも洋書でもいたるところで引用されていましたので、原書に突撃。

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

1988年刊行で、著者は広告代理店の出身です。小さく薄い本ですが、字は大きめ。ずいぶんコンパクトにまとまっている印象です。

この本からもっともよく引用される考えはこちらです。

イデアとは既存の要素の組み合わせである
(万華鏡を回転させて新しい模様を発見するようなもの)

また、アイデアのつくり方には決まった工程があり、フォード社のように(ここにアメリカらしさが出ていますね)一定の過程を経れば誰でも作り出せるとのことです。

その5段階の過程とは、

  1. 資料の収集
  2. 資料の咀嚼
  3. 何もしない
  4. ひらめきを得る
  5. イデアの具体化

資料には「特殊資料」と「一般資料」があり、前者は広告の顧客資料など特定の課題のための資料で、後者は日々の気づきメモ。私も『一冊のノート術』以降メモを続けていますが、あらゆることに対する好奇心は大切なのだと再確認しました。

読みたい関連書籍

『アイデアのヒント』

アイデアのヒント

アイデアのヒント

巻末で「本書の次のステップに」とあります。『考具』でも引用されていました。

3冊目『考具』

こちらも『アイデアのつくり方』の巻末に紹介がありました。文中で引用された参考書籍とは別に、巻末にも関連書籍が載っているといいですよね。新書や文庫にある、あの、広告風のページのことです。

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

博報堂で広告事業を行っている人の本です。コメダ珈琲にて一時間ほどで読了しました(食後のベビーは私の背中でお昼寝中)。

予約本を受け取りに駅の事務所へ行ったところ、事務員さんに「考具なんて言葉があるのかと一瞬考えちゃったよ」と言われました(笑)。あとがきによると、著者の同僚の方が考えてくれた言葉だそうですよ。

イデアに完璧さは不要。アイデアを合わせて企画にする段階で調整すればいい

といった心構えのほか、21の「考具」が紹介されています。

(アイデア収集)

考具1 カラーバス

色や形などの見た目、あるいは匂いや音などから1つのテーマを決めて、周囲のものを観察する(観察しながら日常を過ごす)という方法です。

「見えども見えず、聞けども聞けず(=人は見たいものだけを見る)」に打ち勝つためのテクニックですね。これは私もやろう!

読書でもそうなんですよね。意識した方が欲しい情報が目にとまるので、いろいろな人が「読み始める前に知りたいことのテーマを考えよう」と勧めています。でも私はそれを文字起こしせずに、ふわっとしたイメージのまま読み始めてしまいます。改善しよう…

考具4 七色いんこ

演じることによる気づき。会社で社員の部署を一日入れ替えたら、さまざまな発見があって面白そうだと思いました。アゴで使っていた部署に対してやさしくなれるような思いやりも期待できそうです。

考具5 フォトリーディング

速読の一種。私は速読をしないのですが、この方法なら読む気が失せた本に使えそうだと思いました。

(アイデア展開)

考具9 マンダラート

デザイナーの今泉浩晃さん考案とのこと。3x3の9マスセルを使う手法です。私は少し前にはてブで知りましたが、そのときはスルーしてしまいました。使お。

考具12 連想ゲーム

頭の中で連想しているだけではなくて、スゴロクのようにきちんと書き出すようにします。一次元でなくなるマインドマップはまた別みたい。

考具13 オズボーンのチェックリスト

初耳でした。一つの視点からアイデアを変更する方法。

ほかにも企画用の考具やスパイス用の考具が紹介されています。

最後に、本書と関連したサイトを著者が運営しています。セミナー云々もありますが…著者による「気づき」のブログ記事が面白いので少しずつ眺めています。

http://coquets.jp/

読みたい関連書籍

7つの習慣

完訳 7つの習慣―人格主義の回復

完訳 7つの習慣―人格主義の回復

「考具2 聞き耳をたてる」のところで、聞き上手テクニックが書いてあると紹介されました。聞いたことがある本なので読んでみたいと思います。

『なぜあの店の商品は売れるのか』

なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学

なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学

「考具4 七色いんこ」で、お客さんの気持ちになるための調査事例があると紹介されました。こちらも有名な本のようですが未読です。

読み途中の本

スウェーデン式 アイデアブック』

スウェーデン式 アイデア・ブック

スウェーデン式 アイデア・ブック

続編の「2」もあります。

『知的生産の作法』

知的創造の作法 (新潮新書)

知的創造の作法 (新潮新書)

作家さんのアイデアテクニック本です。池上彰佐藤優の『僕らが毎日やっている最強の読み方;新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』を読んで「通俗化が上手な人」だと知り、著作をいくつか購入。アイデアというと広告業界の人の本が多いですが、ほかの職業の人の本も読んだ方が幅が広がりそうです。

→読みました!

知的生産術ではありませんが、情報収集の手段として新書を勧めている『新書がベスト (ベスト新書)』でも、冒頭で知的活動の重要性を述べていました。気にして見ていればさまざまなところで知的生産について書かれているのに、気にしていないと本当にアンテナに引っかからないものですね…。

おしまい。

『ことばと思考』を読んで、語学の面白さを再認識

「日本語では論理的思考が身につかないので英語を勉強するべき」「哲学的に考えるためにはドイツ語がよい」というようなことを聞いたことがあるのですが、その真偽を知りたいと思っていたところ、『ことばと思考 (岩波新書)』という本を見つけました。

ことばと思考 (岩波新書)

ことばと思考 (岩波新書)

2010年の本ですが時代を考慮しなくても問題なく読めました。

先の私の疑問は「ウォーフの仮説(Wikipedia)」というようです。

この本のテーマでもありますが、仮説はまだ仮説のままでした。ことばの違いによる認識の差は見られるものの、思考に影響があるかどうかまではまだはっきりとわかっていないそうです。

著者の今井むつみさんは慶應大学の教授で、専門は認知・言語発達心理学言語心理学とのこと。ウェブサイトを見ると私の興味に近い研究をしているようですし、自分の大学研究室を思い出してとても懐かしい感じがします。(私も情報系の研究室にいて、慶應や他大学の研究室との合同合宿をしていました。)

この本に、私が外国語に惹かれる一番の理由と同じ意見が書かれていました。

一つの言語(つまり母語)しか知らないと、母語での世界の切り分け方が、世界中どこでも標準の普遍的なものだと思い込み、他の言語では、まったく別の切り分けをするのだ、ということに気づかない場合が多い

外国語を勉強し、習熟することで、その外国語のネイティヴと全く同じ「思考」を得るわけではないにしても、母語のフィルターを通してしか見ていなかった世界を、別の視点から見ることができるようになる

外国語を学ぶ人の中には「海外の人としゃべりたい」「海外旅行に行きたい」という目的の人もいるでしょうが、私はコミュニケーションよりも言語それ自体の仕組みの方に興味があります。そのため、黒田龍之介氏(ロシア語他多数の言語を知る言語学者。母親がなんと絵本作家のせなけいこさん)の本は大好きです。

はじめての言語学 (講談社現代新書)

はじめての言語学 (講談社現代新書)

外国語の水曜日―学習法としての言語学入門

外国語の水曜日―学習法としての言語学入門

その他の外国語―役に立たない語学のはなし

その他の外国語―役に立たない語学のはなし

ことばはあらゆる物事を切り分けて、それぞれに名前をつけています。たとえば「歩く」と「走る」は速度によって使い分けられ、「歩く」と「滑る」は足の動かし方によって使い分けられます。

このような切り分け方は言語によって着眼点や細かさが変わります。「歩く/走る」の境目と「walk/run」が同じとは限らないし、「オレンジ/茶」と「orange/brown」もまた然りです。辞書に頼っているだけだと見逃しがちですが、ついつい自分の母語に引きずられた考え方をしてしまいます。

このことがよくわかる図がこの本に載っていました。あんまり引用してもよくないと思うので、少しだけ…

色の名前が言語間で一対一で対応していないことがよくわかると思います。色以外にも、言語間で切り分けがズレているものは枚挙に暇がありません。

この本では以下の単語がベン図(丸と丸が一部だけ重なるような図)を使って解説されています。

  • 「置く/入れる/はめる」と英語の「put on/put in」
  • 「持つ/背負う/抱える/担ぐ…」と韓国語のことば
  • 「can/container/bottle/jar」と中国語のことば

言語によって物事の捉え方が異なることを抑えた上で読み進めると、次の事実に衝撃を受けました。

最初はシーンのいろいろな要素にそれぞれ細かく注意をはらい、ちょっとした違いも見分けることができる。しかし、赤ちゃんがそれぞれ自分の言語を学んでいくうちに、自分の言語で区別しない要素に対して、注目しなくなってしまう

この本で紹介されている実験によると、ことばを学ぶ前の赤ちゃんは、どの子も「線路をわたる映像」と「道路をわたる映像」を同じ動きとみなし、「線路をわたる映像」と「テニスコート横切る映像」を別の動きだとみなします。日本語を学び始めてもその判断は変わりません。しかし、この3つの動きをすべて「go across」と表現して区別しない英語を学び始めた赤ちゃんは、これらの動きをすべて同じものだとみなすように変化するそうです。

「赤ちゃんのうちはrとlの音を区別できるが、成長とともに区別しなくなっていく」と言われていることと同じですね。なんだか切ないですが、限りある脳のリソースを取捨選択していくのかな…。

次は数の概念についての記述です。

一九九二年に生後五カ月の赤ちゃんが、足し算、引き算ができる、ということを示した研究が科学雑誌「ネイチャー」に発表され、話題になった

4以上の数は、赤ちゃんは大まかな量として扱っているようだ

人間の大人でも、数を正確に表すことばを持たないと、4以上の大きい数を、一つひとつ、他と異なるユニークな数として正確に認識することはせず、人間の赤ちゃんや動物と同じように、概数として「多い」としか認識しなくなるようである

世界には2以上の数を区別しないことばがあるそうです。どういった文化的営みをしているのか気になります。まあ、日本語のように大きな数を数えられても、「302那由多と1,006阿僧祇が…」と言われて認識できませんけどね。

次は空間探索能力について。

場所を示すことばを持たない言語を使う人は探索能力が低く、場所を示すことばを持つ言語を使う人でも言語を使えない状況にされる(何かを朗読させられたり)と探索能力が落ちるという実験が紹介されています。

記憶について。

同じ絵を見せられても、その絵に名前がつくと、その名前によって、その記憶が大きく変わってしまう

最近「脳」についても興味があるので、これと同じような話が出てくる本を探しています。

(車の事故の映像を見せたあと)半分の協力者にはDid you see the broken headlight?と聞き、残りの協力者にはDid you see a broken headlight?と聞いた

前者は「あの壊れたヘッドライトを見た?」で、後者は「壊れたヘッドライトがあった?」になるので、前者の方が「Yes.」と答えた人が多かったそうです。誘導ですね(笑)。

smash(激突する)ということばを使った質問を聞いた人は、実際よりずいぶん速いスピードを推定し、contact や hit ということばを聞いた人は、実際より遅いスピードを推定したのである

うん、誘導です。

話がそれますが、

語同士の相互の関係を表すWordNetという検索システムでは、walkの下位分類として、80ほどの動詞が挙げられていた

これを読んで、英単語のマインドマップの作成を思いつきました。

関連して読みたい本

日本語と外国語 (岩波新書)

日本語と外国語 (岩波新書)

本書で何回も引用された本。今読んでいます。
→読みました!

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

去年発行された同じ著者の本。

ことばの学習のパラドックス (認知科学モノグラフ)

ことばの学習のパラドックス (認知科学モノグラフ)

同じ著者の本。何がパラドックスなのか気になります。

レキシコンの構築 子どもはどのように語と概念を学んでいくのか

レキシコンの構築 子どもはどのように語と概念を学んでいくのか

「レキシコン」という言葉を初めて知りました。古典語の辞書、あるいは特定分野の語彙集のことだそう。

こうして「関連して読みたい本」を書いておくと、何つながりでどの本を読んだのかを後から見返せるので重宝しています。

マーク・ピーターセンの英語本がよかった

偶然知ったマーク・ピーターセンの著作を前年からぼちぼちと3冊読み、とても良かったのでおすすめします。

  1. 日本人の英語 (岩波新書)
  2. 続・日本人の英語 (岩波新書)
  3. 心にとどく英語 (岩波新書)

英語ネイティブなのに日本語で本を書いているのに驚きます。

『日本人の英語』より

日本人の英語 (岩波新書)

日本人の英語 (岩波新書)

日本人の可算/不可算の決め方

朝食べたものを日本人が説明する場合、

I ate… (ホットドッグだから、hot dogだな。これは数えられるから) a hot dog !

のように、名詞を考えてからそれに「a(n)」をつけるかどうか考える傾向にある。

一方、ネイティブは、

I ate a…a…a (一個食べたあれは何だったかな、そうだ、) hot dog !
I ate…uh…uh… (あのかたまりは何だったっけ、思い出した、) meat !

のように、先に可算か不可算かのイメージを持つとのこと。

所有格によって限定される数

the friend of mine
my friend

これらを初出で使うと、自分には友達が一人しかいないことになる。いきなり「my friend」で紹介した場合,それは「my one and only friend」という意味になる。

電子レンジについて話題にするとき、

she put it in her microwave

だと、電子レンジは一台しかないことになる。

she put it in one of her microwaves
she put it in a microwave

だと、複数所有しているうちの一台の電子レンジの話になる。

ただし、電子レンジではなく冷蔵庫を一台しか持っていない場合、

she put it in her feeezer to cool it off

は、アメリカ英語としては不自然になってしまう。

she put it in the feeezer to cool it off

の方が普通。

なぜなら「the freezer」には、「(どの家庭も持っているあの)the freezer」というイメージがあるため。「her microwave」は「(どの家庭も持っているわけではないが)her(彼女の持っている唯一の)microwave」という意味になる。

これって1988年当時の話ですね。なんか変だと思いました。今はどちらも普及しているので、「her」ではなく「the」または「a/one of」でいいのでしょう。

「her」と「the」の使い分けを意識して英文を読むと、書いた人の前提となる意識が見えて面白いですね。たとえば「my mobile phone」と言うのか「the mobile phone」と言うのかによって、「話者は携帯電話がどれだけ普及していると考えているのか(一人一台だと思っているのかどうか)」について分かっちゃいます。

数にはシビアにならないと、いろいろな誤解が生じるかもしれないという例。

the coach of my tennis club

テニスクラブにはコーチが一人しかいない

a coach of my tennis club

テニスクラブにはコーチが複数いる

the ex-wife of my brother

弟に元妻は一人しかいない

an ex-wife of my brother

弟は少なくとも二回は離婚している(元妻が2人以上いる)

これを踏まえて次の文を読むと、

In April, I introduced the coach of my tennis club to a ex-wife of my brother, and by June the two were already married.
( 4月に ,私のテニス ・クラブのコ ーチを ,弟の離婚した妻に紹介したが , 6月になったら ,二人はもう結婚していた . )

コーチは一人で元妻は複数いたということになる。

through の使い道

throughは文脈で和訳できますが、自分で英訳しようと思ったらなかなか使いこなせていません。

  • 直接的作用力(agency)
  • 媒介(intermediacy)
  • 理由(reason)
  • 動機(motive)
  • など

媒介

Much of Mother Theresas work is done(by her)through the United Nations.
(マザーテレサの仕事の多くは,国連を通じて(彼女によって)成し遂げられた.)

理由

He was arrested(by the police)through a misunderstanding.
(彼は誤解から(警察に)逮捕された.)

動機

Kawabatas best writing was achieved(by him)through a desire to capture the essence of classical beauty.
(川端の最高傑作は古典美の精髄を究めんとする熱望から(彼によって)完成された.)

手段につける前置詞の使い分け

written on a typewriter

文章を書く人 → 加工プロセス(typewriter) → 成果物

written with a pen

文章を書く人 → ただの道具(pen) → 成果物

The speech was first delivered in English through an interpreter over the companys closed-circuit television system and was later broadcast by NHK on all its radio stations under the title Expressing Yourself Better with a Variety of Prepositions.
(そのスピーチは,最初は会社の社内用TV回線システム,通訳を介して英語流されたが,後に,「多様な前置詞より豊かに自己表現を」というタイトルNHKからラジオ全国放送された.)

乗り物につける前置詞は、運転との意識の差を表す

電車は立てるからon train、車は包まれちゃうからin car、と覚えていましたが、もっと理解が深まりました。

on + 乗り物

airplane, ship, busなど。乗る人は一人の乗客にすぎず、乗物の運転に特に何の影響も及ぼさない。ただ「運ばれている」感じが強い。

in + 乗り物

car, taxi, private aircraftなど。単に「運ばれる」のではない。乗物の運転と自分との間につながりがいくらか感じられる。

outとoffの違い

Clean out your desk !
(机の中をかたづけてきれいにしなさい.)

Clean off your desk !
(机の上をかたづけてきれいにしなさい.)

Clean your desk !
(机を洗って汚れを落としなさい)

She took out her raincoat.
(彼女は(洋服ダンスか何かから)レインコートを取り出した.)

She took off her raincoat.
(彼女はレインコートを脱いだ.)

He is out of it today.
(今日,彼はどうかしている.)

He is off of it today.
(今日,彼は調子が出ない.)

家に誘う場合の言い方

come to my house

言い方が堅い。

come over (to my house)

リラックスした,インフォーマルでフレンドリーな印象を与える.やや「一直線に」寄ってもらう感じ。

come around

こちらもリラックス。come overよりも「回ってくる」ような,「ついでによる」ような気持が入っているので,わずかに謙虚。

大学名の訳し方には間違いが多い

the University of Japan

日本という国の大学

Nihon University

日本という名前の大学

所有の「's」「of」の使い分け

これを題材にした卒業論文の話をどこかで読んだことがあり、結論は「どちらも大差ない」でした。私は「そんなことない、使い分けはある」と思っていたので、以下の例を読んで幾分スッキリしました。

Ueno Zoo’s pandas

もっとも所有感が強い。他の動物園の責任で飼育されるパンダに対して,これは上野動物園が責任をもって飼育しているものであることを強調している。

Ueno Zoo pandas

最も性質を表現する感じが強い。他の動物園のパンダと違って,このパンダは上野動物園に飼育されているという特徴をもつものであることをいくらか強調している。

the pandas of Ueno Zoo

上記二つの中間

5種類のof

1.成り立ち

a staff of 3 men and 4 women (男性3人と女性4人の職場)

上のように「成り立ち」が構成要素の場合は名詞並びにしないが、「成り立ち」が素材なら名詞並びにできる(例外あり)。

boots of Spanish leather → Spanish leather boots

前者は文学的で、後者は簡潔。

2.位置

north of the city (その町の北方に) 

3.同格

the continent of Asia (アジアという大陸)

「Y(固有名詞)と呼ばれるX(普通名詞)」という意味をもち、英語らしい英語。

4 .包含関係

one of his many lovers (彼の多勢の恋人の一人 )

5.性質

a girl of extraordinary charm (おどろくほど魅力的な少女)

簡単にするために並び替えても意味は大して変わらない。

an extraordinarily charming girl

「時」を気にする英語、「相」(aspect)を気にする日本語

My sister studied English.
My sister has studied English.

後者の妹の方が英語が上手にできる。

My sister had … before …

やり終わった時点に注目している。

My sister had been …ing when …

やり終わった時点をいきいきと表現している。

A : I havent seen you around lately.
(最近お会いしていない. ) around という言葉は,「普通の生活の中で」という意味を与えている
B : Ive been sick.
(病気だったのだ.)

病気自体はとっくに治っているかもしれないが 、病気のせいで今の生活がいくらか影響されている(たとえば人に「この頃 会ってないな 」と言われたり、仕事が遅れている)ような場合は、必ず現在完了形を使う

A : I didnt see you at all last year.
B : I was sick.

去年のことなのでただ病気だったと言うだけ。

ピーターセン氏の英文添削

終わりの方は論文についての書き方が多く紹介されていました。

The lyricsof that song were written on a word processor, whose appeal mainly depends on clever rhyming and puns

遠い関係代名詞を直す。

◯ A word processor was used to write that song’s lyrics, whose appeal would seem to lie mainly in their clever rhyming and puns 一語の形で先行詞になっている単語は主節に存在しない点である.この場合,非制限的用法の which は主節の内容全体を表わしてい 

△ The students were asked to listen to a number of difficult sentences read at natural speed during the first stage of the lesson. After that, they were questioned about the content of the sentences.

非常に単純な短いセンテンスが二つ並んでいると幼稚な感じがする。

◯ The students were asked to listen to a number of difficult sentences read at natural speed during the first stage of the lesson, following which they were questioned about sentence content.

△ His paper does not discuss how he performed the experiment.
(彼の論文では,実験をどうやって行なったかは論じられていない.)

論文調に堅くする。

◯ His paper does not discuss the method by which he performed the experiment.

△ The following results of this experiment were obtained :……
(この実験で次のような結果が出た.)

論文にしては弱々しい。

△ In this experiment, the following results were obtained.

まだ虚弱な雰囲気がある。

◯ We obtained the following results in this experiment :……
◯ This experiment yielded the following results :……
◯ The results of this experiment are as follows :……

能動態にすると、自信をもった,迫力のある表現になる。

△ It is thought that……
△ It may be considered that……

英語の学術論文に一切使わなくても差し支えない。

△ Over the period of the study it was observed that……
◯ We observed that……

ただし「was reported」は「主語から離れすぎ問題」さえなければ、受身のままでも使える。また、論文のアブストラクト(要約)だけは、特定の個人にかかわりのないように書く習慣があるため、受身が多くなる。

the received wisdom (権威あるものとして受け入れられた知識、一般に正しいと認められている説や論)

ややエレガントなところがあり ,とても英語らしい。タキシードを着たような感じ。

the accepted wisdom

もっと平凡。会社のグレーの制服を着ているような感じ。

  • especially と particularly はいつでも互いに交換できる
  • accordinglyは「ある状態に合わせて何かをする」場合に使い、consequentlyは「ある状態の当然の結果として,何かの状態となる」場合に使う
  • 原則として冒頭にコンマで区切った Therefore, を一切使わないこと
  • 英語論文などを書くとき,soは一切使わないこと
  • sinceとbecauseの堅さはちょうど論文にふさわしいが、いかにも「素朴」という感じ
  • becauseという意味をもつ as…… という言い方は科学論文には使わない方がよい.センテンスが曖昧になりかねない
  • therebyという言葉は語感として,学術論文にとてもふさわしい表現
  • henceという言葉も論文にとてもふさわしい

関連して読みたい本

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

『続 日本人の英語』より

続・日本人の英語 (岩波新書)

続・日本人の英語 (岩波新書)

前作から4ヶ月経ちましたが続きを読みました。慣れたのか前作のような衝撃は減りましたが、読んでよかった本です。

アメリカ人はthe Japanese、the Iraniansと他国民をひとまとめにするくせに、自分たちは一人一人別人という意識があるのでthe Americansとは言わず、Americansになる。

just a skosh という日本由来の外来語がある。

be going toとwillの使い分け。一応知っていたけれど再確認しました。

If I’m late, I’ll call you.

遅れたら連絡する

If I’ll be late, I’ll call you.

遅れることになったら連絡する

前作にもあった、所有格による数の意識の差について。やっぱり分かりやすいです。

He has a sore leg.

どちらの足か分からないが、足が一本痛いらしい。

He has the sore leg(s).

「あの足が痛い」って、どの足?聞いていないよ。

He has sore legs.

2本以上の足が痛いようだ。
人間なら両足、タコなら2〜8本の足が痛い。

His legs are sore.

足が全部痛いようだ。
人間なら両足、タコなら8本すべての足が痛い。

『心に届く英語』より

心にとどく英語 (岩波新書)

心にとどく英語 (岩波新書)

こちらも古く、1999年著ですが大いに有用でした。映画のセリフなどを例に挙げて、英語の表現が少し変わるだけでどのような違いがあるのかを解説しています。『ローマの休日』をもう一度見たくなりました。

前から予定していた未来に使う「be going to」と、今決めた未来に使う「will」

彼の本にはよく出てきますね。

I’m going to visit Kyoto this weekend.
.oO(前から今週末は京都に行こうと思っているよ。)

I’ll visit Kyoto this weekend.
.oO(今週末は京都に行こうと今決めたよ。)

我が家は will で言える状況がとっても多いですよ。先月も「今週末は京都に行かない?」と旦那に言われ、3日前に宿を取り、車で半日以上かけて京都に行ってきました。もう少し are going to の状況が多ければ心構えもできるってものですがね。

「away」には「人目を気にしない」という意味がある。
道端で「sleep away」、授業中に「talk away」、など。
「壊す/取り壊す」「やめる/取りやめる」くらいの違いを動詞に与える。

You shouldn’t use words like that in front of children.

今回使った言葉はひとつ(a word)だが、他にもあることを暗示している。
「使っ"たり“しないで」のようなもの。

share with + 信頼 = confide in

「hint」は気配やほのめかし。

I felt a hint of spring in the air this morning.
Our teacher spoke with hint a hint of irritation.

loveとcareの違い。

I thought you loved me!

愛情を失ったことへの批判

I thought you cared (about me)!

人間性への批判

後半は会話でのうまい切り返し方を紹介しています。英語に限った話ではないようなものが多いです。

『僕らが毎日やっている最強の読み方』は本以外の紹介もあって楽しい

本についてブログを書く場合、いくつかの書き方があると思います。

  • 書評、客観的にその本の良さや足りないところを紹介するもの
  • 読書感想文、主観的な感想や受けた影響を書いたもの
  • 読書レビュー、上の二つの中間(一番多そう)

私の場合は自分のための備忘録として「読書感想文」を書いているつもりです。ただ、これまでの記事を読み返すと自分でも分かりにくかったので、もう少し整理して書こうと思い改めました。

読んだ本

読んだ背景

Amazon Unlimitedの影響で読書習慣が復帰して新書にもハマった頃です。

この本に期待したこと

  • 自分のインプットを増やすために、読書以外に適しているものを知りたい

期待したことの結果

  • 油吸収や割れ物包みにしか使っていなかった新聞を読むようにした(笑)
  • dマガジンで雑誌購読を始めた

著者について

池上彰さんと佐藤優さんの対談形式です。

不勉強でして、佐藤さんは存じ上げませんでした。恰幅のいいおじさんの写真が印象的だったので、もう忘れることはないでしょう。かつて外務省勤務で、ロシアに長く住んでいたとのことです。私はロシア語を独学していたことがあるので、興味を惹かれました。

佐藤さんはビジネスのあれこれだかで逮捕歴があることにビックリしました。本文中で堂々と『獄中記 (岩波現代文庫)』が紹介されています。逮捕歴があってもハイレベルなキャリアを積んでいる点では堀江さんと似ていますね(堀江さんは私にはアクが強過ぎて距離を置いていますが)。月に300冊、500冊ととてもたくさんの本を読むそうです。博識ですね。

池上さんについては有名すぎるので割愛。私にとっては『世界を変えた10冊の本 (文春文庫)』の本が良かったです。

概要

池上さんと佐藤さんによる、新聞、書籍、雑誌、ウェブの読み方や、読んだ方がいい情報源の紹介です。

2人の真似っこではなくて、自分との生活スタイルや嗜好の違いなどを加味しながら参考にすると役に立つと思います。

この本で学んだこと

  • 世の中で起きていることを知るのは新聞。世の中で起きていることを理解するのは書籍。雑誌は娯楽。

この本の中で一番心に残ったアドバイスです。ネットの動画ニュースを毎朝見ていましたが、やはり新聞にも目を通すことにしました。

一、二面の記事は他でもよく見かけますが、真ん中あたりの生活面が意外と面白くて発見があります。例えば教育の現場で行われている「新聞でハテナソン(他サイト)」や「ビブリオバトル公式サイト)」というものを知りました。

  • 中吊り広告は入稿前の仮タイトルなので、間違っていることがある。鵜呑みにしない。

電車に乗ると必ずと言っていいほど目を通していました。煽りタイトルが多いな、とは思っていましたが、仮タイトルだとは知らず。結構いい加減なんですね。今まで以上に話半分で読むようにします。

  • ロシアの新聞はエリートが読む。雑誌は新聞を作ってる人が読み、内向けで、ネットにも公開せず秘密主義。
  • 佐藤さんはたまにロシア雑誌に悪口を書かれるそうだ。

国によって新聞や雑誌の立場が違うことは新しい発見でした。内情も面白い。

  • ウィキペディアは間違った情報も多い。
  • 例えば池上さんのページで、出身高校が間違っている。転校したことになっているが、同級生から「池上、お前最初からいたよな」と言われる。
  • 基本は百科事典を見る。ただし自分の分野であれば判断がつくのでウィキペディアを見ても大丈夫。

ネタとして面白いですね。

  • ネットの辞書辞典が更新されているかどうかは、2006年に準惑星に格下げされた「冥王星」の項目を見るといい。

冥王星以外にも判断項目があるといいですね。最古のお金はどうでしょうか。和銅乖離、富本銭、無文銀銭。年を追うごとに見識が変わったような…

私は学生の時から、辞書を買う際には、複数の辞書で好きな言葉をひいて、気に入った解説のある辞書を買うようにしていました。残念なことに今はもう辞書を買う機会なんてありません。『角川ことばえじてん』のような子どもの辞書を買っているくらいです。

  • 哲学などの難しい分野は、通俗化が上手な作家の本を読むといい。
  • 池上彰阿刀田高など。

佐藤さんが池上さんを推している…(笑)。池上さんの本は広く浅いので、導入にはとてもいいですよね。『池上彰の あした選挙へ行くまえに (河出文庫)』とか。私はもう少し深く知りたいなーと思いますが。

阿刀田さんは初めて知りました。覚えておきます。

最後に、雑誌の読み放題サービスは眼中になかったのですが、佐藤さんオススメの「dマガジン」で、私がよく買っている経済誌やビジネス情報誌が読み放題のレパートリーに入っていたので登録しました。

買ってまでは読まない女性ファッション誌や女性ライフスタイル誌も読めて新鮮でした。『OZ Plus』が結構好みでした。

関連して読みたいもの

佐藤さんの読書に興味が出たので。

シェイクスピアを楽しむために (新潮文庫)

シェイクスピアを楽しむために (新潮文庫)

阿刀田さんの通俗化がどのようなものか読んで見たいと思います。購入済み。

知的創造の作法 (新潮新書)

知的創造の作法 (新潮新書)

知的生産ブームなのでこちらも購入済み。
→読みました!

アイデアを捜せ (文春文庫)

アイデアを捜せ (文春文庫)

もう一冊ありました。上の本を読んでから購入を検討します。